2014年4月3日木曜日

朝倉摂さん

去る3月27日、舞台美術家の朝倉摂さんが、天国へ旅立たれました。

摂さんは、私にとってずっとずっと憧れの人でした。
今でも、憧れの人です。

大学を卒業して、大阪で会社員として働き始めたものの、観客としても
なかなか「これ!」という舞台に巡り会えず、悶々としていた頃。
何気なく図書館で開いた図録に、心を揺さぶられました。
その頃の私は、好きな芝居の台本に合わせて、自分で演出を考えたり
舞台美術をスケッチするのが好きだったのですが、そんな自分の
ハートにクリーンヒットする舞台美術に出会ってしまったのです。
それが、朝倉摂さんの美術でした。
「朝倉摂のステージワーク」という図録。
どのページをめくっても、ゾクゾクするような舞台セット。
そして、演出と、照明と解け合うような効果。

それから先は、摂さんが舞台美術を手がけられる公演を探して観劇する日々。
図録で観た作品が、実際のセットとして活き活きと使われているのを
観るのも圧巻でした。


一度、お仕事をお願いしようと、知り合いの方に紹介していただき
代々木のアトリエに伺った事があります。
緊張して何を喋ったかもはっきりとは憶えていませんが、とにかく気さくに
お引き受け頂きました。「いいよ、やるよ」とあっさり言ってくださった
その気っ風の良さが、いかにも江戸っ子でかっこ良かったのは、はっきり
記憶に残っています。
その後、様々な事情でその依頼はなくなってしまったのが、今でも心残りです。

それから、横浜のBankARTで開かれた「朝倉摂展アバンギャルド少女」という
展覧会にあわせて組まれた5回講座(だったかな?)の摂さんの講義にも
参加させていただきました。
そのとき、もう87歳だったのですね…。
矍鑠として、ペットボトルの蓋もご自分でキュッキュと開けておられたのが
とても印象的でした。
一言一言が宝石のようで、惜しみなくご自身の価値観と当時の思い出を
お話してくださいました。


そして、告別式。
摂さんとの3回目の対面がこんな形とは哀しすぎましたが
たくさんの人に囲まれ、たくさんのお花に囲まれ、摂さんはとてもきれいでした。
いつもかっこ良かった摂さん。
好きなものは好き、いいものはいい、そしてダメなものには本気で怒る。
91歳の大往生、と言われるかも知れませんが、
私にとっては、100歳も、200歳になるまでも生きていていただきたい方でした。



図書館で出会ってから、たくさんのものを頂きました。
音楽座の「リトル・プリンス」大好きでした。
本当に、本当にありがとうございました。

心から、お悔やみ申し上げます。
摂さん、さようなら。


http://www.amazon.co.jp/朝倉摂のステージ・ワーク-1991‐2002-朝倉-摂/dp/4891946369/ref=pd_sim_b_1?ie=UTF8&refRID=08V922WF9HYQNMQDHPYA

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