2012年6月24日日曜日

観劇録:月の岬

アイホールで上演中の青年団「月の岬」を観てきました。
本当は…。京都芸術センターでの東京ELECTROCKの「最後にあう、BLUE」
を見る予定だったのですが、どうしても吉本有輝子さんの照明が観たくて。
吉本さんは、維新派や山海塾、少し前までは地点の照明などもされていた、
凄く素敵な照明家さんです。
海の底から空を見上げるような、透明感と奥行きのある、とても私的な照明
をつくられます。

私はもともと、朝倉摂さん、という舞台美術家さんが大好きなのですが、
朝倉さんとよく組んでおられる照明の巨匠、吉井澄雄さんのコンビの作る
舞台がすごく素敵で、そこから照明の美しさを知ることになりました。
ミュージカルの現場で、命をかけて照明を作っている現場スタッフの熱意
を見たことも、影響してるのかも知れません。

話はそれましたが、今回もそれはそれは美しい照明でした。
そして、「月の岬」という作品も、素敵でした。すっかり成人している
姉と弟にまつわる人々(妻や妹、昔の恋人?、妹の連れ合い、など)の
暮らしをスケッチのように描いた作品なのですが、弟の結婚式から物語は
始まり、どんどん暮らしの色んな綻びが見えて来る、そんな内容です
(あ、ばらしちゃった)。
15年前の初演の頃も、姉と弟の関係性が近親相姦的だ、という批評が
あったそうで、同じ公演を観ていた知人と話していたのですが、「そういう
意見を持つのって、案外男性なのかもね」と。男女の性差がどこまで
影響するのか分かりませんが、同性愛、近親相姦など、血のタブー的な
ものに関して鷹揚なのは得てして女性な気がします。
あと、最後に弟の連れ合い(妻)が、失踪した姉の帯締めを(勝手に)
借りている、というシーンがあるのですが、オリザさんはそれを連綿と
繋がる「継承」と仰っていたのですが、私は新参者が徐々に”家”を凌駕
し始める強かさというか、浸食、というイメージを持ちました。

演劇は、ダンスに比べて文脈がはっきりしている分、却っていろんな
解釈があり、それが面白いです。
一つの鏡が演劇だとしたら、その鏡の大きさも、形も、重さも明らか
なのに、何が映るのか、何を映すのかは百人いれば百人違う。
その鏡の形状は、ダンスよりもより具体的なのが、演劇、という気がします。


あー、だんだん着地点を見失ってきたので、今日はここまで(笑)。

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