今回、履歴書、という媒体を手法として取り入れた訳ですが、そもそも履歴書という
のは、非常に特異な媒体です。事実しか書かれていない筈なのに、その人のことがち
っとも分からないし、書いている人だっておそらく、「私がこんな人間であることを
知ってください」と思って書いてはいないでしょう。
そういう意味で、その人の経歴を示してはいるけれども、その人の人となりを表して
いる訳ではないので、 その人の「履歴」を知ることのできる「書」を作ってみたい、
と考えたところに端を発します。
そして今回、履歴を6人にインタビューの形で聞きました。1人あたり、約8時間のイ
ンタビューと、撮影を行いました。台湾人留学生、看護学生、ロシア人主婦、俳優、
大衆演劇の舞台方…。生まれた環境も、人生の道程も、全く異なる人々ですが、市井
に生きる我々の暮らしとどこかクロスオーバーしている、リアリティのある人に協力
を呼びかけました。
そして、芝居の方には、気鋭のダンサー西岡樹里ちゃんが役者初舞台として登場し、
ダンサー/役者として活躍している松本まりさんがぐっと全体を締めていきます。
全然そうは見えないかもしれませんが、私はこの芝居はミュージカルだと思っていま
す。音がぐいぐい、舞台を引っ張って行きます。身体と、音楽と、言葉が絡み合って
闘い合って、異種格闘技のようになっています。
面白い企画です。展覧会やギャラリーになじみのない方でも、演劇的に観ていただけ
る空間になると思います。芸術作品というよりは、証言、という感じでしょうか。
なんとも上手く言えません。上手く言えたなら、これをやる必要はなかったでしょ
う。どうぞ、いらしてください。
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